診療案内ボトックス療法

薬物療法で十分な効果を得られない過活動膀胱でお困りの皆様へボツリヌス療法について

ボツリヌス療法の効果

ボツリヌス療法は、行動療法や飲み薬・貼り薬で十分な効果が得られない場合、または副作用などの理由で治療継続が難しい場合の治療法です。過活動膀胱では下記の3症状、神経因性膀胱では尿失禁に対して行われます。

効果は通常、治療後2~3日であらわれ、過活動膀胱では4~8ヵ月、神経因性膀胱では8~11ヵ月にわたって持続します(効果の程度や持続期間には個人差があります)。効果がなくなってきたら、あらためて治療が必要となる対症療法です。再投与の時期については医師にご相談ください。

作用と治療法

過活動膀胱、神経因性膀胱は、膀胱の筋肉が異常な収縮を生じることで起こります。

ボツリヌス療法は、膀胱の筋肉をゆるめ、異常な収縮をおさえる作用があります。治療には膀胱鏡を使用し、異常な収縮が生じている膀胱の筋肉に、20~30ヵ所、直接薬を注射します。

注射は10 ~20 分ほどで終了します。外来でも治療が可能です。注射による痛みを緩和するために局所麻酔を使用できます。不安な方は、医師に相談してみましょう。

副作用

ボツリヌス療法の副作用

過活動膀胱、神経因性膀胱の治療でみられるのは、主に次のような症状です。これらの症状がみられた場合はすぐに医師に相談しましょう。

尿路感染

尿の出口から細菌が膀胱内に侵入することで生じます。尿路感染により炎症が生じると、尿の濁り、頻尿、排尿痛、発熱、悪寒、血尿などの症状がみられることがあります。

残尿の増加

尿を全部出しきれず、膀胱内に尿がたまってしまう副作用です。投与後は2週間以内に残尿量を測定し、その後は必要に応じて残尿量測定を定期的に行います。残尿量がある程度多くなった場合は、改善してくるまで自己導尿を行う場合があります。医師と相談の上、十分に理解してからボツリヌス療法を受けましょう。

尿閉

尿をほとんど、またはまったく排出できなくなる副作用です。尿が出づらい、尿に勢いがないといった症状がみられます。まれに痛みや残尿感を伴う場合もあります。

自己導尿について

尿を上手に出せず、膀胱に尿がたまってしまった場合に、膀胱から尿を排出する手段のひとつとして「自己導尿」があります。自己導尿とは、膀胱にたまった尿を、カテーテルと呼ばれる管を尿道から入れて、自分で排出する方法です。一定の膀胱容量(一般的に400~ 500mL)を超えないように、一定時間ごとにカテーテルを用いて尿を排出します。自己導尿用のカテーテルの使用は簡便で、小さなポーチに収納できる大きさのものもあります。症状がおさまれば、自己導尿を続ける必要はありません。自己導尿の終了時期については必ず医師の指示に従ってください。

※自己導尿が必要になった場合の導尿実施に同意いただけない方は、本剤による治療を受けることができません。残尿の増加、尿閉などの副作用は、効果と同様、時間の経過とともに消失します。

安全性に関わるその他の注意

安全性に関わるその他の注意

以下の条件に当てはまる方は、ボツリヌス療法を受けられません。

  • 尿路感染症にかかっている方
  • 尿を出しきれない症状があるのに導尿を行っていない方
  • 全身性の筋力低下を起こす病気(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症など)がある方
  • 妊娠中あるいは授乳中の方、妊娠している可能性のある方
  • この治療により、発疹などのアレルギーを生じることがわかっている方
  • 自己導尿が必要になった場合に、導尿の実施に同意いただけない方

また、以下の条件に当てはまる方は、ボツリヌス療法を受ける前に医師に申し出てください。

  • ボツリヌス療法を受けた経験がある方。そのとき治療した病気の名前、治療時期、投与量をわかる範囲で医師に伝えてください。
  • 現在、なんらかの薬を使用している方(市販薬を含む)。一部の抗生物質や筋弛緩薬、精神安定剤など、ボツリヌス療法と同時に使用する場合は注意を要する薬があります。また、抗血小板薬・抗凝固薬を服用中の方は、注射による出血を防ぐため、薬の飲み方を調整する場合があります。
  • 慢性的な呼吸器の病気(喘息など)がある方

治療後に注意すべきこと

以下はボツリヌス療法を受けたあとの注意点です。

  • 治療当日のみ、入浴や激しい運動など、血液の流れを増加させる行為は控えてください。翌日以降は、通常どおりの日常生活を送れます。
  • 女性は治療後2回の月経が終わるまで、男性は治療後3ヵ月が経過するまで、避妊に必要な措置をとってください。
  • ほかの医療機関や診療科を受診する際には、過活動膀胱/神経因性膀胱に対してボツリヌス療法を受けたこと、および治療時期をわかる範囲で医師に伝えてください。
  • ボツリヌス療法をくりかえし行った場合、ごくまれに体内で抗体がつくられ、それまで得られていた治療効果を得られなくなることがあります。複数回の治療を受けたのち、明らかに以前より効果が弱まっていると感じられたら、その旨を医師に申し出てください。

※参考:ボツリヌス療法を受けられる方へ (ハンドブック) グラクソ・スミスクライン株式会社