診療案内前立腺がん

前立腺がんとは

前立腺は男性のみにある生殖器官・臓器であり、前立腺がんは前立腺組織に正常ではない細胞(がん細胞)が増殖した状態です。増殖の程度により、限局がん、進行がんに分けられます。
前立腺がんの症状は、前立腺肥大症に類似しており、血尿や排尿障害(尿意切迫感、尿勢低下、頻尿ほか)などがあります。ほとんどの前立腺がんは自覚症状がなく、健康診断や人間ドックなどでPSA(前立腺特異抗原:prostate specific antigen)上昇を指摘されて、見つかります。進行がんの場合には血腫による尿閉や病的骨折(骨転移が原因の骨折)などで見つかることもあります。
前立腺がんの多くは数十年の経過で極めて緩徐に進行すると考えられており、臨床的に治療が必要でない、つまり寿命に影響しないがんである可能性があります。剖検時に見つかる寿命に影響しなかったがん(ラテントがん)が80歳以上の方の59%に認めたという研究もあります(Bell KJ, et al. Int J Cancer.2015 ;137:1749-57)。日本では、前立腺がんが男性の罹患数が最も高い疾患となっており、2017年の一年間で91,215人の方が新規に前立腺がんと診断されています。2011年から2015年に前立腺がんと診断された方の5年生存率は98.8%と報告されています(出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん登録))。

診断

PSA検診などで前立腺がんが疑われた場合には直腸診や超音波検査、MRI検査などで精査します。それら検査により前立腺がんの可能性が高い場合は前立腺針生検が施行されます。前立腺がんは前立腺組織を直接採取する前立腺針生検により、病理組織学的に診断されます。当院では基本的には経直腸的操作によって、前立腺針生検法を行っています。
日本では一年間で前立腺がんと診断された場合、全身CTや骨シンチグラフィー、PET-CTなどで転移の有無を調べます。
骨転移の診断には通常、骨シンチグラフィーが用いられます。最近では全身のMRIを撮像し、骨転移を調べる方法(DWBIS:Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background body signal)が実施されることもあります。

治療

前立腺組織に限局したがん組織の進展を認める場合は、ロボット支援下根治的前立腺全摘除術や放射線治療(IMRT:強度変調放射線治療、陽子線)などの局所治療が適応になります。
リンパ節やほかの臓器(肺や肝臓など)に転移を認める進行した前立腺がんの場合は、ホルモン治療(黄体形成ホルモン放出ホルモン:LHRHを抑制する注射製剤や除睾術)を基本として、内服の抗アンドロゲン製剤などや化学療法が適応になります。
骨転移に対しては、骨関連の有害事象予防のための骨修飾薬(ビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体)使用に加えて、骨転移巣に対する放射線外照射治療や多発骨転移に対する放射線同位体治療(Ra-223)が適応になることがあります。

遺伝子治療について

前立腺がんに対する薬物療法としてはホルモン療法が第一選択とされています。ただし、ホルモン療法継続中に前立腺癌がホルモン不応性となることがあります(去勢抵抗性前立腺がん)。現状としてホルモン療法をこのまま継続しても前立腺がんの抑制が期待できないため、一般的には新規ホルモン剤(エンザルタミド、アビラテロンなど)や化学療法に切り替えることがあります。しかしながら、去勢抵抗性前立腺がんに移行する方の中にはBRCA遺伝子などの遺伝子変異が要因となる方がいます。そのため、遺伝子の変異があるかを調べ、異常を認める方には遺伝子異常に合った治療を行うことがあります。例えば、BRCA遺伝子変異陽性の転移性ホルモン不応性前立腺がんに対する治療法として、オラパリブ(リムパーザ)が承認されています。