診療案内腎がん

腎がんとは

腎がん(腎細胞がん、腎臓がんとも呼ばれます)は、腎臓にできる悪性腫瘍です。腎臓の尿細管(尿をつくる非常に微細な管)細胞から発生します。腎がんは、全悪性腫瘍の2~3%を占めており、50歳以降の中高年者に多く認められ、まれに30歳以下の若年者にも発生することがあります。男女比は2~3:1、男性に多く認められます。発生原因ははっきりしていないところも多いですが、腎がんの危険因子としては、肥満・喫煙・高血圧などがあります。他にも遺伝性疾患であるフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病やバート・ホッグ・デュベ(BHD)症候群などは、高率に腎がんを発症します。また透析患者では透析ではない人に比べて腎がんの発症率が数十倍高くなると言われています。

症状

腎がんの3大症状は血尿・側腹部痛・腹部腫瘤とされていますが、3つの症状が揃うことは多くありません。早期がんでは自覚症状はなく無症状です。転移すると肺・リンパ節・骨などに起こしやすく、転移した場所によって様々な症状が出ます。

検査

スクリーニングにはエコーが良く用いられますが、診断は血液検査、レントゲン検査、CT検査、MRI検査、核医学検査等を必要に応じて施行します。特に造影CT(ダイナミックCT)が有用とされています。転移のチェックには骨シンチやPET-CTも用いられます。その結果により、病状のステージを決めます。ステージにより治療法を検討いたします。一般的に手術の前に生検(エコーやCTで確認しながら針で刺して生体組織を採取して顕微鏡で調べる検査)などで病理学的に確定診断することはありません。がん細胞の播種(ばらまいてしまう事)や他臓器損傷、サンプリングエラーなどの問題があるためです。しかし検査上、判断が難しい場合、手術が困難あるいは手術適応でない場合などに生検を行います。

治療

手術療法

腎がんの治療法は進行度によってことなりますが、一般的に手術がもっとも有効と考えられています。手術には腫瘍のみを取り出す腎部分切除術と、腎そのものを摘出する腎全摘除術があります。腎部分切除術は、腫瘍の大きさが4㎝以下で、画像上部分切除が可能と考えられる症例を適応としています。4㎝以上のものは通常、腎全摘除術を行ないます。
手術方法としては、腎全摘除術と腎部分切除術のどちらにも開腹術、腹腔鏡下腎摘除術があります。2016年にロボット支援下の腹腔鏡手術が認可され、腎部分切除術の多くはロボット支援腎部分切除術で行われるようになり、当院でも導入しております。
手術による切除が困難な場合には、薬物療法(分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤)が行われます。

薬物療法

手術が不可能なかた、転移を認めるかた、手術だけでは治せないかたに対して、薬物療法が行われます。

免疫療法
インタフェロン、インターロイキン等の免疫療法が長い間行われていましたが、奏功率は高くなく、最近ではあまり使用されなくなりました。
分子標的薬
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)とエムトール阻害剤(mTOR阻害剤)があります。働きとして、がんは自分の周りに新しい血管を作ること(血管新生)で、栄養や酸素を取り込んで成長しています。分子標的薬はその血管新生を妨害することによって、がんへの栄養を阻止して、がんの増大を防ぐ薬です。主な副作用としては高血圧、下痢、倦怠感、手足症候群、腎障害などがあります。
免疫チェックポイント阻害剤
ヒトは、がん細胞や体内に入ってきた細菌・ウィルスを攻撃して排除しようとします。この働きを免疫機能といいます。がんには免疫機能を阻害して攻撃されないようにするものがあります。この薬剤は、がんが免疫の働きを阻害しないようにすることで、自分の免疫力を強くしてがんをたおしてもらいます。主な副作用としては、免疫機能の働きが暴走することによって、がん以外の自分の正常な細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患と同じような事を起こすことがあります。
最近では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤の併用療法も行われています。がんや患者さんの状態に合わせて使い分けられています。

放射線療法

通常、腎がんは放射線治療に効果が低いため、がんを完治させる目的で行われる事は少なく、合併症予防、症状の軽減や苦痛の緩和などを目的した治療のために行われることが多いです。ただし、骨転移病巣に対して、疼痛コントロール目的で行なう場合があります。

化学療法

現時点では腎がんに対して有効な抗がん剤(化学療法)はほとんどありません。

ロボット支援腎部分切除術

本手術の手順手術は側臥位(横向き)で行います

  1. 腹部に図のようにポート(道具を入れるためのあな)を設置(切開穴は8-15mmで、全部で4-6カ所)します。
    従来法
    経腹膜アプローチ
    後腹膜アプローチ
  2. 設置したポートや鉗子に手術ロボット・ダビンチXiを装着(ドッキング)します。
  3. 腎臓周囲を剥離し、エコーを用いて腫瘍を同定します。
  4. 腎動脈および腎静脈を剥離し鉗子を用いて血流を一時遮断(腎臓への血流を退化させ、切除の際の出血をコントールします。遮断時間が長くなると、腎機能の低下を招くことがあります)
  5. 腫瘍を切除し、摘出します。
  6. 開放された腎盂(尿の通り道)の縫合や血管の縫合止血(糸で縫うことで、尿のもれと出血を止めます)します
  7. 遮断していた血管を開放し、血流再開をします。血流再開による出血の確認をします
  8. 予め留置してある尿管カテーテルからの尿溢流の確認をします(尿が漏れないかどうか。腫瘍の位置や腎盂との距離などを考慮し、尿管カテーテルを留置するかどうかを決めています。)
  9. 切除した腫瘍は専用の袋に入れポート(腫瘍が多き場合は皮膚創を延長して摘出します)より摘出します。顕微鏡の検査に提出します。術後7-14日で結果が判明します。
  10. ドレーン(血液や尿がおなかの中に漏れていない確認するための管)を留置し閉創します(傷をとじます)
  11. 状況に応じて術後に尿管ステント留置が必要な場合があります。
  12. 手術時間は概ね約2-5時間を予定しています。

予想される効果と不利益(有無とその程度)

効果
腫瘍を摘出することにより、悪性であれば、癌の根治が期待できます。組織を顕微鏡で診断することで癌か癌でないかの確定診断が初めて可能です。
不利益
この手術に伴って生じうる不利益(合併症)は以下の通りです。
手術中・手術直後
出血
腎臓は血流が豊富(1分間に500mlも血液が流れています)なため、ある程度の出血が予想されます。通常は予想以上の出血があった場合には、輸血が必要になることもあります。
周囲臓器損傷
3〜4%程度の頻度で周辺臓器(腸、ひ臓、すい臓、肝臓、肺、胆のう、血管、尿管)を損傷することがあります。通常手術中に修復できますが、肺の損傷では胸腔トロッカー留置が必要になることもあります。修復手術を後日、行うこともあります。
感染症
通常手術後2〜3日は発熱します。発熱が持続する場合でも一般的には抗菌薬の投与で軽快します。感染などにより5%程度の頻度で傷)が開くこともあります。
術式の変更
ロボット支援手術が手技的な理由、または合併症への対応により継続できない場合、あるいは術中出血量が想定外に増えたり、手術時間が著しく超過した場合、安全の観点から開腹手術へ変更します。機械的な不具合でロボット支援手術の継続が不可能となった場合にも腹腔鏡手術または開腹手術へ変更します。
手術後
静脈塞栓
手術中、血管内(特に足の血管)で血の固まり(血栓)ができ、それが肺へ飛んで肺の血管を詰まらせる病気です。万一、静脈塞栓が疑われた場合、血栓を溶かす薬を投与します。発症するのはきわめて稀ですが程度によっては命に関わることもあります。致命的となる場合も多く、徹底的な予防しかありません。
腎機能障害
反対側の腎機能が十分でない場合に術後に予想以上に腎機能が悪化し透析が必要となる可能性もわずかながら存在します。
水腎症
尿管や腎盂の狭窄や尿の流出障害が原因で腎臓が腫れる現象です。膀胱や皮膚からチューブを挿入し尿の流出路を保持する必要がある場合もあります。
仮性動脈瘤
腎動静脈瘻
腎腫瘍切離部の動脈が術後に腫脹し動脈瘤を形成あるいは、小さな動脈と静脈の変形をきたす現象です。血管造影を施行し動脈瘤にコイル等の塞栓物質を留置し治療する必要があります。いずれも術後突発的に破裂し突然の出血や血尿が出現する事がありますので注意が必要です。
緊急的な対応が必要です。輸血が必要になることがあります。
尿漏
腎腫瘍切離部の尿路(主に腎杯や腎盂)が開放し、腎周囲やドレーンを通じて体外に尿が漏れ出る状況です。膀胱からのカテーテルの留置や経皮的なチューブの挿入が必要になる事があります。修復手術、長期間の入院が必要になることがあります。
術後の創感染
傷の縫い直しが必要になることもあります。開放手術よりロボット手術では起こりにくいと考えられます。
創ヘルニア
傷の下の筋膜がゆるんで、腸が皮膚のすぐ下に出てくる状態で、再手術が必要になることがあります。開放手術よりロボット手術では起こりにくいと考えられます。
皮下気腫
二酸化炭素が皮膚の下にたまって不快な感じのすることがありますが、数日で自然に吸収されます。陰嚢が膨らむこともありますがすぐによくなります。
ガス塞栓
二酸化炭素が血管の中に入って肺の血管が通らなくなるもので、まれではありますが危険な合併症です。致命的となる場合があります。
創部への腫瘍の転移
腹腔鏡手術では、腫瘍の組織を取り出すときに創に転移が生じたとの報告が、まれにあります。
局所再発
腎臓腫瘍の切除部位に、しばらくして再発することがあります。文献的には1%程度あり、後日、腎摘除術が必要になります。
術後の腸閉塞
術後に腸が癒着し、再手術が必要になったとの報告があります。
術後の腹膜炎
小さな腸の傷に気がつかなかった場合、後で腹膜炎となり、再手術が必要になる場合があります。重篤な状況になることがあります。
体位関連合併症
この手術は側臥位(横向き)で行われます。このため腫瘍がある反対側を下にして、体が滑ったり移動したりしないように支える必要があります。この支えとなる器具が体の一部に過度に圧迫されていると、手足では運動神経障害、頭部では脱毛などを引き起こします。運動神経に異常があれば早期からリハビリを行います。また、腎臓のある場所は下腹部や太ももの皮膚の神経が走っているため、皮膚の感覚が一部抜けたようになることがあります(外側大腿皮神経障害)。知覚神経なので時間がたてば回復してきますが、数か月を要します。これらの神経障害の発生頻度は稀です。また下になった側の肺は膨らみにくく、無気肺や痰詰まりを起こすことがあります。

画像検査により腎癌を疑って手術を行いますが、摘除後の病理組織診断で腎癌以外の疾患の診断(良性、悪性でない)がつくことも稀にあります。

本診療行為以外に可能な診療方法とその利害得失

腹腔鏡手術
ロボット手術に比べて手術中の操作制限が多いため、腫瘍の大きさや位置により技術的に困難な場合があります。従って、腎機能温存という点でロボット手術のほうがが望ましい可能性があります。
開腹手術
ロボット手術に比べて傷が大きいため、術後の痛みが大きく術後の回復が遅い、手術中の出血量が多いなどの欠点があります。一方で、腫瘍の大きさや位置により、開腹手術の方がより安全に施行できる場合もあります。また高度の癒着が予想される場合、開腹手術がより安全な可能性があります。
凍結治療
腫瘍を凍らせる治療です。手術ができない患者さんに多くは行います。