論文紹介

論文紹介2

【論文】

Optimal method for measuring tumor extent in needle biopsy specimens to identify small-volume prostate cancer.
(微小な前立腺癌を識別する為の、前立腺針生検における腫瘍量の至適評価法)
Kajikawa K, Kanao K, Kobayashi I, Nishikawa G, Yoshizawa T, Kato Y, Watanabe M, Zennami K, Nakamura K, Sumitomo M
Int J Urol. 2016 Jan;23(1):62-8

【背景】
近年、PSAスクリーニングによる前立腺癌の診断が、過剰診断、過剰治療につながると懸念されている。過剰治療の回避方法として、active surveillanceがある。国際的なガイドラインでは、前立腺生検における生検コア腫瘍量がactive surveillanceの一つの指標になっているものの、その適応は様々であり未だ検討が十分に行なわれていない。そこで今回、経直腸前立腺針生検における生検コア腫瘍量と、前立腺全摘標本の腫瘍量を比較し、臨床上有意ではないとされる腫瘍体積の小さな前立腺癌(insignificant cancer)の識別における生検コア腫瘍量の有用性を検討した。

【方法】
当院において経直腸前立腺針生検(12ヶ所)および前立腺全摘除術を施行した100例を対象とした。生検で採取された組織1本1本を顕微鏡で確認し、腫瘍部位をマークし、採取組織長とコア腫瘍長を個別に計測した。そこから生検腫瘍量のパラメーターとされる陽性コア本数(PCN)、最大腫瘍占拠率(GPC)、最大コア腫瘍長(GLC) 、合計コア腫瘍長(TLC)を算出した。また、前立腺全摘標本も腫瘍部位のマーキングを行い、その病理スライドをスキャンし、コンピューターで3次元構築を行うことで、最大腫瘍体積と合計腫瘍体積を算出した。その結果を元に、insignificant cancerを識別するために有用な生検腫瘍量のパラメーターを統計学的に解析し検証した。今回、臨床上有用でないとされる微小な前立腺癌として、最大腫瘍体積<0.5 ml、合計腫瘍体積<0.5 mlのもの、さらには近年報告されている最大腫瘍体積<1.3 mlや合計腫瘍体積<2.5 mlといった新たな定義においても検証した。

【結果】
平均生検コア長、PCN、GPC、GLC、TLCは、それぞれ13.3 mm、3.39本、36%、4.86 mm、11.8 mmであった。また、平均の最大腫瘍体積と合計腫瘍体積は、それぞれ1.01 ml、1.25 mlであった。生検腫瘍量のパラメーターの中で、腫瘍体積の小さな前立腺癌を識別するのに有用なものをROC分析で検証したところ、TLCのAUCが新旧どの定義においても各種生検腫瘍量パラメーターの中で最も高いAUCを示した。また、単変量、多変量解析においても、TLCが有用な因子であることが示唆された。

【考察】
微小な前立腺癌を識別するにあたり、経直腸針生検におけるTLCが、PSADやその他の生検腫瘍量パラメーターと比較して最も有用である可能性を示した。さらに本研究では、小さな前立腺癌として新旧の定義で検証したところ、どの定義においてもTLCが有用であるという結果であった。また、そのカットオフ値も5-7 mmと、経会陰針生検における諸家の報告と近似していた。さらに、近年の定義に照らし合わせると、TLCのカットオフ値は20 mmまで引き上げられることも示唆された。ただし、active surveillanceの適応は、生検コア腫瘍量以外にもPSA、臨床病期、Gleason scoreさらには年齢などといった患者それぞれに合わせて適応を考慮する必要がある。本研究は生検コア腫瘍量と全摘腫瘍量の直接比較検討を行なったものであるが、その他のパラメーターとの組み合わせも検証し、active surveillanceの適応含め今後さらなる検討が必要である。

【結論】
生検における腫瘍量のパラメーターの中では、合計コア腫瘍長が小さな腫瘍体積の前立腺癌を識別するために最も有用なパラメーターである可能性を示した。

記)梶川圭史

論文紹介1

【論文】

Penetration of piperacillin-tazobactam into human prostate tissue and dosing considerations for prostatitis based on site-specific pharmacokinetics and pharmacodynamics
(Piperacillin/tazobactamの前立腺組織への移行性の検討と部位特異的PK-PD解析に基づいた前立腺炎への投与法の検討)
Ikuo Kobayashi, Kazuro Ikawa , Kogenta Nakamura , Genya Nishikawa ,Keishi Kajikawa , Takahiko Yoshizawa , Masahito Watanabe , Yoshiharu Kato ,Kenji Zennami , Kent Kanao , Motoi Tobiume , Yoshiaki Yamada , Kenji Mitsui ,Masahiro Narushima , Norifumi Morikawa , Makoto Sumitomo
Journal of Infection and Chemotherapy 21 (2015) 575-580

【目的】
Piperacillin-tazobactam (PIPC-TAZ)は、広域抗菌スペクトラムを有する注射用抗菌薬である。種々の細菌に対して優れた抗菌活性を示すため、前立腺炎の治療や前立腺における侵襲的処置に対する感染予防にもその効果が期待されている。しかしながら、標的部位である前立腺組織への薬剤の移行性、および薬物動態−薬力学の詳細な検討は行われていない。本論文では、PIPC-TAZの前立腺組織への移行及び、部位特異的pharmacokinetics(PK)-pharmacodynamics(PD)解析により前立腺炎に対するPIPC-TAZの有効性を評価した。

【方法】
前立腺肥大症に対する経尿道的前立腺切除術施行前にPIPC-TAZ 2.25 g(24名)または4.5 g(26例)を30分間点滴静注した。血漿および前立腺組織を投与開始後0.5-5時間から複数点採取、前立腺組織中PIPC-TAZの薬物濃度測定を高速液体クロマトグラフィーで行った。血漿、前立腺組織内のPIPC-TAZ濃度は3-コンパートメントモデルを用いて解析した。Time above the minimum inhibitory concentration (T>MIC)を用い、6つの投与法の有効性について評価し、抗菌作用をシミュレーションした。

【結果】
PIPC-TAZの前立腺組織と血漿における濃度比は、最高薬物濃度(Cmax)と薬物濃度時間下面積(AUC)において約35〜40 %であった。また血漿、前立腺組織共に投与量に依存して濃度の上昇が見られた。投与量の増量による抗菌作用の上昇が得られる可能性が示唆された。シミュレーションより、静菌的作用として30% T>MICを目標とした場合、PIPC-TAZ 4.5 g 1日2回、もしくは2.25 g 1日3回投与にて90%の達成率が得られた。殺菌的作用として50% T>MICを目標とした場合、PIPC-TAZ 4.5 g 1日3回、もしくは2.25 g 1日4回投与にて90%の達成率が得られた。

【結論】
部位特異的PK-PD解析により、PIPC-TAZの投与法の妥当性を評価した。PIPC-TAZは前立腺外科的手技における感染予防、前立腺炎に対する治療において有用である。

記)小林郁生

  • 診療のご案内
  • 学生研修医の皆さまへ